仏  話

速成寺法話集
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和尚になった泥棒

泥棒がいた。

この男は、捨て子で親を知らない。

物心ついたときから、

人のものを盗んで生きていた。

今日も彼は、腹を空かして、

盗む獲物を探し求めていた。



和尚がいた

名を龍樹という。

ある日、和尚は王宮で王妃から、

王冠のような托鉢椀をいただいた。

純金製でダイヤモンドを

惜しげなく散りばめた

素晴らしい細工の施された、

金の托鉢椀。


和尚は、この托鉢椀をみて思った。

「このようなものは、

 すぐに盗まれるだろう。」

和尚は王宮を出るなり、泥棒にあった。


泥棒はおどろいた。

「なんだ、あの托鉢椀は!

 売れば一生遊んで暮らせるぞ!!

 盗むか。。。」

泥棒は、和尚の後つけていった。


和尚は、寺に帰る。


泥棒は、和尚が眠りについたら、

盗んでやろう、のきに隠れて

入り口を見張っていた。


和尚は、

完全に泥棒に気付いていた。

和尚は、

扉をガラガラあけると

のき下に隠れている

泥棒に向かって、

金の托鉢椀を無造作に

ポイと投げ捨てた。


そして、またピシャリと

扉を閉めた。


泥棒は驚いて腰を抜かす。

そのまま盗んで

帰ればいいものを

泥棒は一目見た和尚に、

なぜか、とても惹かれた。


あって話をききたくなった


泥棒は扉を叩く。

「和尚、入っていいですか?」


和尚

「入りなさい。

 それは貴方への招待状だ。」


泥棒はすごすごと本堂に入り、

和尚に会釈する。

金の托鉢椀をてにしながら

あのそのと、曖昧な泥棒。


まさか自分が泥棒だとは言えまい。


和尚はそんな泥棒の一語一語を

丁寧に聞いてから、こう言った。

「それを差し上げよう。」


泥棒、驚いた。

「こんな高価なものを、

 見ず知らずの私にくれるんですか!」


和尚

「それを差し上げよう。

 持って帰りなさい。」


みなしごで、泥棒をして

生き抜いてきた彼である。

親の愛も知らない。


この不思議な和尚の行為に、

心が開いた。


「和尚さんはすごいなぁ。

 これ売ったら

 一生遊んで暮らせますよ。」


泥棒は告白する。

自分は泥棒で、

この金の托鉢椀を盗もうと

和尚のあとをつけてきたのですと。


和尚はいいました

「君が泥棒だなんて事は

 わかってるよ。」


泥棒は

「おれが泥棒だと知って、
 
 こんな高価なものを

 くれるんですか。」


和尚

「どうせ、眠れば

 君に盗まれただろう。
  
 だったら、なにも君を

 私の泥棒にすることもない。
 
 だから差し上げたんだ。
 
 遠慮しなくていいから

 持って帰りなさい。」


泥棒は感動した。

今までこんな人に会ったことがない。

「和尚は立派な方ですね。

 俺も和尚さんみたいに

 なりたいもんだ。」


和尚

「なれるよ。特別な秘訣はない。

 今すぐそうすればいい。」


泥棒

「和尚、きれい事は聞きたくないです。

 俺は人を殺したこともあるんです。

 それに我慢ができません。

 そんな俺が、和尚みたいに

 なれるわけがない。」


和尚

「そんなことは全く関係ない。
 
 それとこれとは違う話だ。

 今すぐそうすればいい。」


泥棒

「俺は泥棒ですよ、
 
 泥棒してもいいんですか?」


和尚

「泥棒は完璧にやればいい。

 それとこれとは別問題だ。」


泥棒

「普通、こういうときに坊さんは、

 人のもの盗めば地獄に堕ちるとか、

 嘘ついたら舌抜かれるとか、

 そんなこと言うんじゃないですか。」


和尚

君は泥棒しないと

 生きていけないのだろう

 
 どうせ盗むなら、

 完全に目を覚ましてやればいい。

 まるで自分を、他人を眺めるように

 大きな所から眺めながら。

 これは仏の智慧だ。」


泥棒は、要領を得ないまま

金の托鉢椀を持って帰っていった。


4日後、この泥棒が寺に帰ってきた。

顔面蒼白、フラフラである。


和尚は、托鉢で得た粥があったので

何も食べていなさそうなこの泥棒に、

半分差し出した。


粥を食べながら泥棒は、

ぽろぽろと涙を流しながら和尚にいった

泥棒

「和尚はずるい。和尚の言う通り、
   
 自分を眺めていたら、

 泥棒できなくなった。
  
 俺は今まで、

 悪いことをしている自分を
  
 なんだかかっこいいように

 思うときもあった。
  
 なのに、他人を見るように

 自分見てたら、
  
 なんだかひどくみっともなくて、
  
 盗めなくなったんです。。。

 盗もうと思っても
  
 手の力が抜けて

 盗めないんです。」


和尚

「じゃあ、金の托鉢椀を売れば

 良かったじゃないか。
   
 遊んで暮らせるだろう」


泥棒

「いや、これ持ってたら、

 なんだか心が落ち着くんです。

 托鉢碗が、

 幸福のお守りのようで、

 手放せなくて。。」


和尚は、笑いながらいった

「世の中に、幸福のお守りなんていう

 都合の良いものは存在しないよ。

 それは、ただの思いこみだ。

 私はおまえに

 泥棒を止めさせようなんて、
 
 考えていない。

 おまえは、托鉢椀を

 売ってもよかったし、

 泥棒したければすればいいし、

 泥棒がみっともないと

 気付いたのなら

 自分に尊厳を持って生きればいい、

 自分の人生じゃないか

 自分で決めればいい。」



泥棒は、ずいぶんと考えこんで

それから、和尚に托鉢椀を

差し出して、こういった。


「和尚さん。弟子にして下さい。

 貴方の側にいたい。」


のちに、この泥棒は

立派な和尚さんになりましたとさ。

おしまい
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この記事に対するコメント

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- | 2018/06/09 1:53 PM
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